安心して生活を楽しむことができる住まいづくり 鹿児島住宅リフォーム推進協議会

事例紹介

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第32回「住まいのリフォームコンクール」審査講評

住まいのリフォームの優れた事例を表彰してリフォームを推進することを目的とした、(公財)鹿児島県住宅・建築総合センターの主催する「住まいのリフォームコンクール」は今年で32回目となった。今年の応募作品は、木造や鉄筋コンクリート造の築100年以上から築21年までの16件で、築35年以上が12件と全体の8割を占め、木造戸建て住宅が14件、RC共同住宅が2件だった。木造戸建て住宅の1件の作品に平面図が付けられておらず、審査ができないため審査対象から外さざるを得ず、また、宿泊施設へリフォームした作品1件の辞退があり、14件での審査となった。

建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)が小規模な住宅建築にも適用され、今後、リフォームで確認申請が必要となると、建築物省エネ法の基準を満たす必要が生じる。鹿児島の古民家は、掃出窓の縁側が廻り、開放的で夏向きに造られているが、縁側のある開放的な掃出窓の建築は建築物省エネ法の外皮の基準を満たすことが困難となっている。そこで、各県で、その地域でつくられてきた伝統的な建築を継承し建てられるよう、建築物省エネ法の外皮の基準の緩和が可能な気候風土適応住宅の基準を定める動きがあり、熊本県ではすでに運用がはじまった。鹿児島県でも、現在、建築士会等で基準の検討が進められている。古民家等の改修で、縁側を残すか居室として縁側部分を取り込むかは、建築主と設計者の意向で多様である。</p> <p> しかし、なぜ‘縁側が日本の伝統的な建築で長年造られてきたのかを、一度、考え直すべきではないだろうか。一般的な古民家では、半間(約90cm)の軒庇があり、さらに半間の縁側があるため、居室から見ると一間(約1.8m )の庇があることと同等である。縁側は、夏は日射を防ぎ冬は日射を室内に取り込み、開け放して通風が可能な、緩衝空間となっている。エアコンがなかった時代、縁側は、やはり快適に暮らすために必要不可欠な空間として位置づけられ、これまで継承されてきた。鹿児島の気候にはやはり縁側はあった方がよいのではないだろうか。今回の作品にも縁側を縁側として再生した作品もあり、私としては高く評価した。

さて、今年度の審査委員会は9月30日に開催され、最初に6名(1名欠席)の審査委員が14件の応募作品を各自読み込んだ後、一人6票を各作品に投票したところ、5票が2作品、4票が2作品、3票が4作品、2票が2作品、1票が2作品となった。各作品の得票を踏まえながら、審査員が、一つ一つ作品の評価できる点や問題点について慎重に意見を交換した。その結果、0票と1票の3作品をはずした9作品に審査員一人5票を再投票することになり、5票が2作品、4票が1作品、3票が4作品、2票が2作品となった。そこで5票を獲得した2作品のどちらかを県知事賞とすることとし、5票の2作品のみで投票を行い、「築100年 家族の思い繋ぐ古民家再生」を県知事賞に決定した。協議を重ね、5票を獲得していた「時代と世代をつなぐ家」は先の県知事賞と同様の改修内容だったことから企画賞とし、理事長賞は「息を吹き返した70歳の家」となった。もう一つの企画賞を「持続可能な 日本の 古民家」、奨励賞をRC共同住宅の改修案の「夫婦と子供のためのエコリビング」と新築に近いコストをかけてはいるが骨格を再利用しデザイン的にも優れていることから「桜島を望む家」に決定した。耐震改修について優れている特別賞には、「ラーメン作るユーチューバーハウス」を選定した。

審査講評

住まいのリフォームコンクール審査委員会
委員長 鯵坂 徹 [鹿児島大学大学院理工学研究科 教授]

審査委員
委員長鯵坂 徹 鹿児島大学大学院理工学研究科工学専攻建築学プログラム教授
委 員八反田 淳一 (一社)鹿児島県建築士事務所協会会長
委 員落合 ひとみ (公社)鹿児島県建築士会女性部会幹事
委 員桑原 耕 (一社)鹿児島県建築構造設計事務所協会会長
委 員岩元 ミユキ 鹿児島県インテリアコーディネーター協会会長
委 員上村 康孝 鹿児島県土木部建築課住宅政策室長
委 員松尾 浩一 (公財)鹿児島県住宅・建築総合センター理事長
第32回「住まいのリフォームコンクール」入選作品集

鹿児島県知事賞:『築100年 家族の思い繋ぐ古民家再生』

おもて、なかえ、馬小屋の3連棟の築100年程度の木造平屋の古民家の改修。馬小屋部分全体となかえ部分の一部を撤去し減築、機能的に不足した部分を若干増築している。旧来の骨組みだけでなく、古瓦、切石、建具、欄間等を有効利用しながら、断熱や基礎のRC化・耐震壁を設けて、新築とほぼ同等の機能向上を目指している点が高く評価された。特に天井のない小屋裏の見えるLDKは居心地のよさそうな空間である。また、改修後も座敷の縁側を残し、畳敷きの和室がある点も評価された。この和室と縁側は、タイトルとおりのこれまでの家族の古民家の思いを継承する空間となっていると考えられる。仏壇障子を照明器具へ、ガラス障子の再利用等も審査員の共感を得た。一方、審査員からは、外観がツートンカラーで切妻の青い屋根へ改修されており、周辺環境とどのように調和しているか心配との意見もあった。できれば、外観は旧来の素材や色調を継承してもよかったのかもしれない。古民家は新建材でなく、地域のほんものの材料が使われており、その魅力を一部でも継承しようとして部材等を再利用した設計者の考え方が素晴らしく、鹿児島県知事賞に選定した。

『築100年 家族の思い繋ぐ古民家再生』 株式会社 建築工房 匠

(公財)鹿児島県住宅・建築総合センター理事長賞:『息を吹き返した70歳の家』

霧島市の築約70年の木造平屋を、まだ30歳代の建築主が購入し改修した作品。まだ若い建築主が新築でなくリフォームを選ばれた点と、田園風景の中で、屋根の素材や外観を継承し景観的にも周囲に調和していることが高く評価された。 もともとの段差を解消して床をフラットにし、LOW-eガラスやグラスウールにより断熱性能を向上している。内部は、一部の梁が残されてはいるが、天井・壁ともボードを貼り白く仕上げられ縁側も居室化され内部がマンションのようにも見えるとの意見もあったが、畳敷きも一部あり、従来の形状をうまく活かした点に審査員の賛同が得られた。コストから、基礎をRC化でききなかったため、シロアリ防除、土壌散布を実施したとしている。 地域の空き家を購入しリフォームして居住する若い世代が、今後、増えていくことを期待したい。

『息を吹き返した70歳の家』 有限会社 リビング亀沢

企画賞:『時代と世代をつなぐ家』

相続した築100年以上の大正5年の平屋のリフォーム。既存の梁や柱を活かすともに柱を補強、屋根を瓦からコロニアルに軽量化、床壁天井に断熱材を施工し、耐震性と機能向上を目指している。外部はサイデングが張られ、内部は白い大壁となっているが、旧来の黒ずんだ梁が見え、新築にはない味わい深いインテリアとなっている。しかし、もう少し旧来の形態を残して、南側の広縁や真壁・欄間等を残す方法もあったのかもしれない。敷地は指宿市のようだが、周囲の景観との関係性が応募書類から読み取れず、判断できなかった。

『時代と世代をつなぐ家』 有限会社 幸福住建

企画賞:『持続可能な 日本の 古民家』

頴娃町の築60年の改修で、玄関位置を変更し、2つの和室を残して洋室化、床下、天井裏、内壁の断熱化工事を行うとともに、ジャッキアップによるレベル補修と礎石周りにコンクリートが打設されている。瓦を取り替えてはいるが、写真では、外観の形態はそのまま継承されているように見える。内部は、縁側が残され、真壁や竿縁天井が継承されており、伝統構法の古民家の空間が引き継がれるとともに、リビング等の大壁の白い壁が明るいイメージを創出している。水廻りは更新され合併浄化槽となり、一部の蟻害部分と腐朽部分は、根継ぎ等々で補強されている。旧玄関が押入れとなっているが、折角の旧玄関をもう少し活かす使い方があればさらによかったのではないだろうか。

『持続可能な 日本の 古民家』 株式会社 建築工房 Work・space

奨励賞:『夫婦と子供のためのエコリビング』

築21年の鉄筋コンクリート3階建ての4DKを2LDKにリフォームした作品。バルコニー側のダイニング、洋室、和室の3室をワークスペースのある1ルームのLDKとし、使いやすい空間とした。また、今回はRC共同住宅のリフォーム作品が2つ応募されていたが、水廻りを改修しながら面積あたりの工事単価が他案の1/2と、廉価で実施されており、審査員から評価された。

『夫婦と子供のためのエコリビング』 ユーミーコーポレーション株式会社

奨励賞:『桜島を望む家』

桜島を正面に眺められることから、新築でなく築47年の在来工法の中古住宅のリフォームを行った作品。一旦骨組みまで戻し、耐震補強と平面計画を見直し、新築に近いコストでリフォームされているが、内外部のデザインが秀逸で奨励賞となった。また、外構のフェンスとブロック擁壁を撤去することにより、道からの景観が地域に開かれたイメージに一変しており、この点でも審査員の評価が高かった。

『桜島を望む家』 株式会社 創建

特別賞(耐震改修):『ラーメン作るユーチューバーハウス』

鹿児島市内の築35年の在来木造の住宅を趣味のラーメン作りとセカンドハウスとしてリフォームした作品。耐震金物、筋交いを取り付けるとともに、土間も配筋してコンクリートのベタ基礎化した。防音と断熱工事も実施され、耐震化の工事写真等が詳しく添付されていたことから評価され、最も特別賞に相応しい作品として選定された。

『ラーメン作るユーチューバーハウス』 有限会社 西谷工業

審査講評
住まいのリフォームコンクール審査委員会
    委員長 鯵坂徹(鹿児島大学大学院理工学研究科 教授)

過去の「住まいのリフォームコンクール」

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