安心して生活を楽しむことができる住まいづくり 鹿児島住宅リフォーム推進協議会

事例紹介

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第28回「住まいのリフォームコンクール」審査講評

住まいのリフォームの優れた事例を表彰してリフォームを推進することを目的とした、(公財)鹿児島県住宅・建築総合センターの主催する「住まいのリフォームコンクール」は今年で28回目となった。今年の応募作品は、木造住宅、鉄筋コンクリート造など22件だが、例年に比べてデザインのレベルの質が高い印象を受け、次年度以降の展開が期待される。

人口減少、高齢化、地球環境問題がますます顕在化しつつある。建築を大切に使い続け、地域の住環境を良好に保つことができるリフォームの果たす役割は重要である。しかし、南九州では、木造建築のシロアリ被害が顕著で、古民家等を改修した際、真壁構造に合板やボードを貼り大壁構造に改修する是非について作品選考の中で話題となった。

古民家の木材には、杉以外の松や檜が散見される。ゴキブリ目のシロアリは光でなく風を嫌う習性があり、シロアリに食べられやすいと言われる松材や檜材を大壁で隠蔽してしまうと格好の標的となり、構造材がシロアリに食べられてしまい取り返しのつかない事態になることが多い。シロアリは、柱等の垂直材より小屋組、梁、鴨居等の横架材の方が食しやすく、杉はなかなか食べないと言われており、改修の際にはどのような木材がどこに使われているかを確認する必要がある。

改修の際に、伝統的な真壁の構成や土壁のインテリアを大壁のマンション風にリフォームすることは、意匠性やインテリアの質から考えその建築の価値を損なうことになる可能性がある。「ほんもの」の材料が室内に現れている伝統構法の空間は、今ではなかなか再現できないものでもあり、また、真壁構造は構造材が露出しているため、地震災害の際にどこが損傷したか一目瞭然である。災害の多い日本で長年培われてきた伝統構法のよさを、リノベーション等で無にしたくないものである。

審査委員会は9月14日に開催され、最初に7名の審査委員が22件の応募作品を各自読み込んだ後、一人7票を各作品に投票した。今回は満票の作品がなく、まず表の入らなかった5作品を賞の対象から外し、一票の作品2つと二票の作品5作品について、票を入れた審査委員から評価した点を説明いただき1件ずつ賞の対象作品として残すのか意見を交換した。

結局、敗者復活とはならなかったが、「通り庭に集う家」と題して電器店を住居にリフォームした作品が目を引いた。単に子供たちが里帰りしたときに泊まるだけでなく、昔の電器店の近隣の客達が集うことができるコミュニティの場とした作品で、以前のCD販売の壁面をイメージした棚を設け、閉店した店舗を地域のコミュニティの場とした提案は、今後の商店街活性化のヒントになるような気がする。

そして次に、3票以上の票の入った作品毎に、評価できる点と問題点を慎重に意見交換を実施した後に、今度は残った10作品に対して審査委員一人が5票を投票した。その結果、6票集めた「小さな住まいのゆとりある暮らし」を知事賞に、5票だった「築45年木造アパートをフルリノベーションした戸建て住宅」を理事長賞に決定した。その後、得票率から企画賞3作品、奨励賞2作品、特別賞として構造耐震的にすぐれた作品を1点選び、各賞の受賞作品を決定した。

審査講評

住まいのリフォームコンクール審査委員会
委員長 鯵坂 徹 [鹿児島大学大学院理工学研究科 教授]

審査委員
委員長鯵坂 徹 鹿児島大学学術研究院理工学域工学系教授
委 員古川 稔 (一社)鹿児島県建築士事務所協会会長
委 員有元 綾 (公社)鹿児島県建築士会女性部会副部会長
委 員木場 正人 (一社)鹿児島県建築構造設計事務所協会会長
委 員岩元 ミユキ 鹿児島県インテリアコーディネーター協会会長
委 員福永 貴幸 鹿児島県土木部建築課住宅政策室長
委 員西薗 幸弘 (公財)鹿児島県住宅・建築総合センター理事長
第28回「住まいのリフォームコンクール」入選作品集

鹿児島県知事賞:『小さな住まいのゆとりある暮らし』

築30年のRC造平屋の住宅の南面と東面にL型形状に木造の階高の高い建築を増築し、水回りも一掃して改修、老後の夫婦の終の棲家としてリフォームした計画。

RC造のフラットルーフ、白っぽい外装が、東西方向から見ると一新、内部も大きな居間と食堂が庭に面した明るい空間に変貌している。また、RC部分と木造の接続部は、増築した木造屋根の方が高いため、雨仕舞にも好都合で、その高天井から光が居間と食堂に導入されている。

既存の古い木造住宅が解体されたのは少し残念だが、RC造住宅の木造増築によるリフォーム再利用の事例として、審査員の多くが賛同し、鹿児島県知事賞に選定した。

『小さな住まいのゆとりある暮らし』 志賀建築設計室

(公財)鹿児島県住宅・建築総合センター理事長賞:『築45年木造アパートをフルリノベーションした戸建て住宅』

古くなった木造のアパートは取り壊されて建て替えられるのが一般的だが、二住戸が2階にあった築45年のアパートの外部階段・廊下を撤去し、家族5人の住まいにリフォームした計画。

内外部とも、以前、アパートだったとは思えないように改修されており、設計者の苦労が伺い知れる。

アパートの改修のため、上下階に連続した耐震壁が設けにくいという問題があるが、大部屋となるリビングダイニングを2階に計画することにより、耐震上の問題を解決するだけでなく、リビングへの採光を向上させ、住みやすい住宅に生まれ変わらせている。古いアパートの改修例として高く評価できる。

『築45年木造アパートをフルリノベーションした戸建て住宅』 南国殖産(株)リフォーム事業部

企画賞:『暮らしに溶け込む茶室』

鉄筋コンクリート造住宅1階の22帖の洋間を六畳ほどの茶室(和室)に改修した珍しい作品。

廊下を設けて躙口を計画、機能的によく考えられた茶室を実現し、水屋も配置されている。元の打放しコンクリートの内装を生かした天井の間接照明をはじめ、斬新なデザインと質の高いインテリアが審査委員の目をひいた。

また、この工事費が約250万円であることも評価された。和室から洋室へのリフォームが多い中、茶室(和室)へのリフォームは、魅力ある改修事例として好感がもてる作品である。

『暮らしに溶け込む茶室』 株式会社 建築工房 work・space

企画賞:『家具と雑貨で彩られる家』

鉄筋コンクリート7階建て共同住宅の約85㎡住戸をリフォームした作品。

寝室・子供室といった個室の居室を狭くしリビングダイニンを充実、ウォークインクローゼットやドライルームなど、生活をバックアップする非居室を確保して住みやすいマンションに改修している。資料の写真から判断すると、内装の仕上げにコンクリート打ち放しや無垢の床材が見え、飽きのこないデザインとなっていると思われる。

ただ、外装に面した部分の断熱への配慮をどのように工夫したか説明が欲しかった。

『家具と雑貨で彩られる家』 ヤマサハウス株式会社
リノベーション課
増改築・リノベる

企画賞:『築47年の古民家がよみがえった!フレンチも格別の味!』

郊外の築五十年弱の民家をリフォームし、隠れ家的なレストランに改修した店舗付住宅の作品。

南面の八帖+六帖の続き間を板張りの床とし、障子を外して広縁とひとつづきのレストラン空間としている。既存の欄間や鴨居を残し、壁も土壁の上に漆喰を塗り重ねて真壁構造のままとしている。変えるところと変えないところをはっきりさせ、結果として、日本の伝統的な民家の空間イメージをうまく継承しながら、費用も抑えた計画になっている。

まだ大工の技術や材料の豊かだった昭和時代の民家の改修で、すでに当時と同様の民家は造りにくいものとなっており、この時代の民家のよさを見出し、うまく活用している点が評価できる。

『築47年の古民家がよみがえった!フレンチも格別の味!』 (株)小森昌章建築設計事務所

奨励賞:『安心・安全で 木の良さが感じられる 楽しい家』

築41年の在来工法の木造住宅を、無垢の木材をできるだけ用いて、使いやすい平面にリフォームした作品。

もともと大壁だった部分もあるが、真壁部分は真壁としてリフォームされており好感が持てる改修方法となっている。食堂と応接間を隔てていた階段の位置を変え、使いやすく明るい居住空間となっている。

ただ、階段を外壁側に寄せているため、耐震性への配慮をどのように工夫したか説明が欲しかった。

『安心・安全で 木の良さが感じられる 楽しい家』 株式会社 建築工房 匠

奨励賞:『住み継ぐ暮らし〜 DIYで暮らしに愛着を』

築30年、50㎡の民家を自分でできるところはDIYで行い、総工費400万円でリフォームした作品。

地域と子供の繋がりを考え、長男が生まれたのを機に空き家になっていた実家を改修して引っ越したプロジェクト。天井をなくして2階床の根太が見えるダイニング天井や、無垢の床貼り等、DIYならではのインテリアが評価できる。

また、何よりもマンションでは地域に住むことにならないことに気づき、戸建て住宅で地域とともに子供を育てようという建築主の考えにエールを送りたい。是非、末永く住み続けてもらいたいものである。

『住み継ぐ暮らし〜 DIYで暮らしに愛着を』 (株)大城建築設計事務所

特別賞:『家族団欒 自然と家族が集まる住まいへ』

耐震診断を実施し、築45年の住宅をリフォームした作品。

平屋の住宅だが、小屋裏にロフトを設け、そのロフトに至る階段と吹抜け(高天井)を計画し、のびやかな新たな空間が創出されている。耐震性能を大きく向上させている点が評価された。

ただ、内外装とも新たな仕上げで覆う大壁構造としているため、シロアリへの対策をどのように工夫したか説明が欲しかった。

『家族団欒 自然と家族が集まる住まいへ』 (有)ゆうあいプラン

過去の「住まいのリフォームコンクール」

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